さぬき市津田町山側にある元庄屋のお屋敷の改修工事のご相談をSNSより依頼を受け、一昨年の丁度今頃、調査に伺い設計を行い
昨年竣工した物件です。敷地は津田町北端雨滝山の麓に位置し、南には瀬戸内を望むことのできる高台に
ひっそりとその佇まいを存続させています。
近隣は段々畑と田が点在し、山側は山菜や木の実が採れ、
都市部とは別の時間がゆっくりと流れるている気分豊かな処にあります。
お施主はここのご子孫。
他の親族はこの建物を残すことに不安を多く持っていましたが、
お施主様の心の中では、この建物がなくなる事の方の不安さが多く募っていたようです。
私が一昨年、初めて現場調査に入った頃の状態では、他の親族の方々が
残すことに不安を持つ気持ちが解るほど、荒れかけていました。
塀は倒れ、土塀は崩れ、建物内の一部は土足でしか上がれないような
状態にまでなっていましたが、
しかし々、流石にここの地域を守ってきていた庄屋であるこその建物の威厳は
十分すぎるほど存在感を持って、まだまだ大丈夫と、訴えていました。
※写真1枚目 中庭の塀は倒れたまま。入り口もどこから行けるか解りません。
※写真2枚目 土塀は崩れ、木は鬱蒼と母屋を覆い、どよ~んとした空気。
工事は解体から入ります。
既存の建物の構造をできるだけ残すように計画を行い、
悪い部分は現地で大工と相談しながら、ゆっくりとしたスピードで工事を
進めていきます。古民家改修工事は、時間が掛かるのです。
ここの物件では、約7か月間、工事に費やしました。


※ 写真3枚目 手前和室の床を一度全撤去した時の様子
※ 写真4枚目 奥和室の床を一度全撤去した時の様子。
この時、手前和室の床は治した後。
改修工事はこの建物をただ住めるようにするのではなく、希望をかなえられる範囲で
快適に過ごせるようにすることも肝心です。
今回改修工事では、工事に際し、対応可能箇所には断熱・気密の工事を行い、
更に、外観も整える工事も行い、見た目にも気分が良く
過ごしても気持ちいい空間を考えての計画にしました。


※写真5枚目 勾配天井の屋根下に断熱材を施工した時のもの。
※写真6枚目 屋根瓦(セメント板)は、見た目と防水を考え塗料で仕上げします。
上側が仕上げ終了後、下側は既存(今から工事)の写真。
全体的に庄屋の家というよりは、ちょっと軽めの雰囲気に仕上げましたが、
もともとあった存在感(歴史)がにじみ出てくる建物になりました。
改修後に伺うと、最初この建物を残すことに不安を持っていた親族の方も
喜んで頂き、帰省する回数も増えたとの事で、大変良かったと思います。
8枚目 手前和室
9枚目 手前和室から裏庭 風が気持ち良いのです。
10枚目 吹き抜けのキッチン。 奥には浴室や水回りがあります。
11枚目 玄関。お客様をお迎えします。
12枚目 元在った紅葉を剪定し、外装を綺麗に整えました。
13枚目 アプローチは、石・苔・竹で美しく。
今回は建物(母屋)の一部分を改修工事し、再利用した事例をご紹介致しました。
主に生活に利用するスペースではありませんが、この機会に手を入れたことで
建物自体が存続する事になりました。
もちろん、全ての古民家がこのようにドラマティックに生まれ変わる事も
ないかと思いますが、古民家が再生できる一つの事例になればいいなあ
と、思います。
最後までご覧に頂き、誠にありがとうございました。